診断:臨床検査、慢性疲労症候群の診断における臨床検査の役割

Dr. Charles W. Lapp, Hunter-Hopkins Cente
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Mail Magazine ME/CFS Information, No.33, 2002.7.8

Diagnosis: Diagnostic Testing The Role of Laboratory Tests in Diagnosis of Chronic Fatigue Syndrome
http://www.cfids.org/about-cfids/diagnostic-testing.asp




現在の慢性疲労症候群(CFS)の診断は主に、患者の症状が疫病管理予防センター(CDC)の定める症例定義に合致するかどうかに基づいて行われています。従って、患者の症状の原因となり得るその他の疾患の除外、同時発症又は体調不良の原因となる疾患の特定、という2つの観点からCFSが疑われる方の検査が行わなければなりません。

CDCによる1994年CFS症例基準では、慢性疲労の原因となる疾患を除外するために有用な検査についての検討が行われ、下記に示す一連の方法が提示されています[1]。研究は続けられていますが、残念ながら現時点で推奨できる特定の検査方法はありません。幾つかの研究により、慢性疲労症候群と診断するための検査手法に関するこれ以上の研究は、意味が無い事が示されていま す[2]。

もちろん重複症状を持つ疾患が疑われる場合には、診断を確定または除外するための詳細な検査を行う必要があります。例えば全身性エリテマトーデスが疑われる場合には抗体・補体検査、多発性硬化症が疑われる場合にはMRI、腰椎穿刺、視覚誘発電位測定を行う必要があります。 慢性疲労症候群の診断に関する詳細な議論はこの記事の範囲を超えていますが、CFSと共通の特徴を多数持つ疾患についてはそのリストを文末に示しました。医療履歴、診察、適切な検査により、これらの疾患を除外しなければなりません。

これまでに、多くの研究者によって、免疫状態や病原体、内分泌系や中枢神経系疾患の検査が行われてきました。しかし、患者が検査の目的を十分知らされている場合、プロトコル研究の一部として行われる場合、診断に疑いがある場合を除いて、これらの研究はもはや不要である事は経験上明らかです。 例えば、CFSでは視床下部‐下垂体‐副腎系が抑制され[3]、24時間コルチゾールレベルの低下や平坦な副腎皮質刺激ホルモン応答曲線、 成長ホルモン(ソマトメジン、IGF−1)濃度の低下が生じているこ とが分かっています。多くの研究から、CFS患者の脳の凸面における 点状のT2強調病変の存在が明らかとなり[4,5]、SPECTスキャンによる大脳および中脳血流の異常減少が繰り返し報告されています[6]。 また、CFSでは免疫系の上方調節が特徴的ですが、概してナチュラルキラー細胞の活動は低下する事が知られています。その結果、潜在している病原体が完全に抑制されず、例えばCFSの患者では、一般健常者と比べてヘルペスウィルス(EBウィルス等)、クラミジア種、マイコプラ ズマの血清が再活性化や顕在化していることが明らかとなっています。

それでは上述の除外検査のほかには、CFSが疑われる場合に何を行うべきでしょうか。私は、抗核抗体(ANA)やライム血清検査(エライザ法で陽性または擬陽性の場合ウェスタンブロット法により確認をする)、 自律神経障害に関する傾斜テーブル検査、ポリソムノグラフィーを行います。最初の二つの検査は、関節炎が考えられる場合や患者がライム病地域を何度も訪れている場合には重要です。検査は比較的安価な上、CFSと似た症状を持つループスエリテマトーデスやライム病は早期の治療が可能であり、資源を無駄にしないためにもこれらの検査を行うべきです。 しかしCFS患者のANAやライム・エライザ検査の結果は、ボーダーライン上にあることも珍しくありません[7]。そのような曖昧な結果は、不安の原因となったり、無差別な検査につながってしまうこともあります。

傾斜テーブル検査は、CFS患者の最大96%に見られている神経調節性低血圧、起立性頻脈症、軽度の起立不耐症を含む自律神経障害の診断に用いられています[8]。これらの自律神経障害は治療可能で、適切な治療によりCFSの症状は著しく緩和されます。陽性であるかどうかの臨床的予測や、自律神経障害の種類の予測は不可能であることから[9]、事実上この検査は全ての患者に対し意味のあるものでしょう。 しかし、傾斜テーブル検査は比較的高価で、CFSにおける起立性不耐症に対して理解のある機関で適切に行われなければなりません[8]。すな わち、全ての患者がこの検査を受けることができないかもしれません。

CFSと併せて、睡眠時無呼吸症候群や他の睡眠障害も多く見られます。 これらの睡眠障害の認識と適切な管理により著しく症状が改善し、体重増加や高血圧、脳卒中等の派生的合併症が防止されます。いびき、無呼 吸期、起床時の息切れ、肥満、高血圧、短首、顎後退等の症状があるな ど、睡眠障害を持つ可能性の高い患者には、睡眠モニターを考慮しなければなりません。

入院検査に比べ精度は劣りますが、家庭での睡眠モニター検査は睡眠時無呼吸症候群の除外に非常に有効です。この検査は安価かつ簡易的であ り、大抵の場合睡眠センターで利用できます。しかし、家庭用の装置は 一般に筋肉運動のモニタリングが含まれていないため、レストレスレッグ症候群、周期性四肢運動障害、ミオクローヌス症候群に対しては、医師は患者や家族の報告に頼ることになるでしょう[11]。



●参考文献

1. Fukuda K et al. The chronic fatigue syndrome: a comprehensive approach to its definition and study. Annals of Int Med.1994; 121(12):953-59.
2. Lane TJ, Matthews DA, Manu P. The low yield of physical examinations and laboratory investigations of patients with chronic fatigue. Am J Med Sci.1990;299:313-18.
3. Demitrack MA et al. Evidence for impaired activation of hypothalamic- pituitary-adrenal axis in patients with chronic fatigue syndrome. J Clin Endocrinol Metab.1991;73:1224-34.
4. Buchwald D et al. A chronic illness characterized by fatigue, neurologic and immunologic disorders, and active human herpesvirus type 6 infection. Ann Intern Med.1992:116 (2):103-13.
5. Schwartz RB et al. Detection of intracranial abnormalities in patients with chronic fatigue syndrome: comparison of MR imaging and SPECT. Am J Roentgenology.1994;162:935-41.
6. Schwartz RB et al. SPECT imaging of the brain: comparison of findings in patients with chronic fatigue syndrome, AIDS dementia complex, and major unipolar depression. Am J Roentgenology.1994;162:943-51.
7. Bates DW et al. Clinical laboratory test findings in patients with chronic fatigue syndrome. Arch Int Med.1995;155:97-103.
8. Bou-Holaigah I et al. The relationship between neurally mediated hypotension and the chronic fatigue syndrome. JAMA.1995;274:961-67.
9. Personal communication with Dr. Peter Rowe at Johns Hopkins University, Baltimore, Md.
10. Buchwald D et al. Sleep disorders in patients with chronic fatigue syndrome. Clin Infect Dis.1994;18 (1):568-72. 11. Victor LD. Obstructive sleep apnea. Am Fam Phys.1999;60 (8):2279-86.



●著者 Dr.Lapp Hunter-Hopkins Center内科(Charlotte,North Carolina) Duke大学総合診療部臨床助教授



●検査項目・検査理由

検査:完全血球算定
理由:貧血、白血病、他の血液疾患、ループスエリマトーデス等 血管コラーゲン疾患の除外

検査:血液検査
理由:血糖値、電解質値、腎・肝機能、カルシウム・骨代謝、 血清蛋白量の確認

検査:甲状腺機能検査
理由:一般的な筋肉痛・疲労原因である甲状腺機能の確認

検査:赤血球沈降速度(血沈)検査
理由:炎症、感染症、血管コラーゲン疾患の一般的指標

検査:尿検査
理由:感染症、腎臓病、可能であれば血管コラーゲン疾患の除外



●CFSと共通する症状を持つ疾患

○自己免疫疾患 ベーチェット症候群、皮膚筋炎、ループスエリテマトーデス、 多発動脈炎、多発筋炎、ライター症候群、リウマチ様関節炎、 シェーグレン症候群、血管炎

○血液疾患 貧血、ヘモクロマトーシス

○内分泌疾患 アジソン病、クッシング症候群、糖尿病、甲状腺機能亢進症、 甲状腺機能低下症、卵巣機能不全、汎下垂体機能低下症

○胃腸疾患 セリアック病、クローン病、過敏性腸症候群、サルコイドーシス、 潰瘍性大腸炎

○感染症 細菌性心内膜炎、波状熱、肝炎、HIV感染症、 ライム病、潜在膿瘍、灰白髄炎/ポストポリオ症候群、結核

○寄生虫感染症 アメーバ症、包虫症、ランブル鞭毛虫症、トキソプラズマ症

○真菌感染症 ブラストミセス症、コクシジオイデス症、ヒストプラスマ症

○悪性腫瘍 ホジキン病、リンパ腫

○中毒・代謝性疾患 シガテラ毒、有毒化学物質・重金属・農薬の暴露、 マックアードル症候群

○神経筋疾患 線維筋痛症、筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症

○精神疾患 アルコール中毒/薬物乱用、不安障害、鬱病、過換気症候群、 躁鬱病、統合失調症

○その他の疾患 自律神経障害、ナルコレプシー、睡眠時無呼吸症候群、 スウィート症候群、ヴェグナー肉芽腫症


翻訳:Co-Cure-Japan, M.K.




出典
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